あたしは冷たくなった紅茶を見つめていた。
「…」
自分の家なのになぜ他人に、振り回されなければならないのか。
景「お嬢さん?」
「…」
景「おーい…」
「!…あ、…な、なに?」
景「ぼーっとしてどないたん?無理はあかんで?紅茶冷めてまうし」
心配そうにあたしの顔を覗き込んできたのは、料理長の景。
景「またあのこと考えてん?」
「…いえ。そうじゃないわ。心配しなくても大丈」
「こんなとこ、おったんかいな」
「!!」
景「!?」
テラスのドアが勢いよく開いた。声がすると同時に景は急いで座っていた椅子から立ち上がる。
景「ま、真緒さん」
真緒「探してたんやで。明日のパーティーのこと話そうおもてな」
「…別に話すことなんかありません。」
このちゃらけた感じのメンズはお父さんの再婚相手の息子、真緒。
あたしとは偶然、同じ大学らしい。けれど学校ではいつも違う女の子たちと一緒に戯れているのをよく見かけた。
景「…料理などは事前にユキから聞いておりますが」
真緒「?は?景になんてきいとらんわ。俺はいまユキだけに聞いてんねん!」
景「…失礼いたしました」
「失礼なのはあなたの方じゃありませんか?そうやって使用人や執事などを頭ごなしに怒鳴るのは当主としてどうかと思いますけど?」
あたしは真緒の前に立ちはだかった。
すると真緒はあたしの頬を軽く叩いた。
「っ!?」
景「!」
真緒はあたしの胸ぐらを、掴み眉間にシワを寄せながら顔を近づけた。
真緒「そうやって当主に口答えするやつがいるから厳しくしてんやろ?わからへんのか!」」
「っ…」
真緒「ここはお前の家やけど、なぜか当主は俺やねん。その意味わかるやろ?」
「っ…!!」
真緒は手を緩めて、ニヤつきながらテラスを後にしていった。そんな後ろ姿をあたしは睨む。
景「大丈夫か?」
「っ!…やっぱりあいつしか考えられない!」
あたしは叩かれた頬に手を当てた。
景「もうあの計画、亜季には話ししたん?」
「…いいえ。それを話せば今度はお兄ちゃんが狙われるかもしれないもの」

