「お、沖くん」

「?」

「…ありがとう、助かった」

「……」



私が素直に言うとは思わなかったのか、彼は少し驚きそして笑みを浮かべる。



「じゃ、今度お礼よろしく」

「へ?」

「楽しみにしてるから。じゃあね、おやすみ」

「ちょっ、待っ…」



そしてそれだけ言うと、手をひらひらと振って走り出してしまう。



(お礼って…)



結局ひたすら、彼のペースに巻き込まれてる。

けど、何だか心が温かい。



久しぶりに誰かに触れたからか、怒ったり素顔を見せたりしたからか…わからない、けど。



ただその夜は久々によく眠れた。

心地いい、夜だと思った。