「…持ってたんだ、指輪」

「本当はな。毎日ここにいれて、持ち歩いてた」

「……」

「つけられずにいたのは、逃げたかったからなんだろうな」





あの頃の痛みと自分の背負うものから

逃げたかった、から





「…私は、逆」

「?」

「つけてることで、自分たちが上手くいってるように見せたかった。…現実から、逃げたかったの」

「……」





逃げてばかりいた自分。

だけど向き合うと決めたから、勇気を出して薬指から指輪を外し、同じように紙の上へ置いた。