高級クラブ《疾風:はやて》は、上品・上質を売りにした大人の社交場だった。

一人で飲めるバーカウンターや、大勢で座れるソファーテーブル。

ダーツ・ビリヤードなどなどが楽しめるプレイルーム。

防音完備のカラオケ付き個室もあった。

洗練されたホストやホステス達は、夢の一夜を約束するのはもちろん、そこで見聞きした全てを一切口外しない。
そのため、商談や接待に《疾風》を使う顧客は少なからずいた。


そんな《疾風》も最近はトアル噂で持ちきりだ。


「君たち、しってるかな」
「あの噂のこと」
「あれ、どう思う」

「そうですね…」
「あれはきっと…」
「…じゃないかなっと」


今夜も、あっちこっちのテーブルで噂話が花を咲かせていた。