「そこに居るのは誰だ!!」

懐中電灯の光が少年を照らし出した。

少年がチラッと声のほうを見ると、制服姿の警備員が唖然と立ち尽くしていた。

少年と警備員の目が合い、しばしの沈黙 。

フェンスの外に座りこむ少年が警備員にどう見えるのか。
言うまでもない。


「ま、待て。早まるなっ!」

警備員は慌てて走りよってきた。


近づいてくる警備員を見て、少年はなんの躊躇もなく飛び降りた。

摩天楼の屋上から…。


警備員は愕然と立ち止まり、少年が落ちていくさまを見た。

「あ、あぁ…」

今、警備員の目の前で少年が…。

警備員はフラフラとフェンスに歩み寄った。

さっきまで、ここから手を伸ばせば届きそうな場所に少年が座っていた。

だが、もうそこには誰も居ない。

警備員はノロノロとケータイを取り出した。

かけるのは110番だ。

「もしもし、警察ですか…?」

通報してから、ふと不思議に思った。




「あの子はどうやってここに来たんだ?」