今日はなんにも集中できなかったな。

……でも禮木に恋できたら龍佑のことなんて忘れられるかもしれない……


私はなんのためらいもなく、そんなことを思ってしまった。
その瞬間頭のなかに現れた画像に、涙がこぼれた。

いや…こぼれてしまった。


龍佑が私の大好きな笑顔で私の名前を呼んでいる。
もちろんそんなことはありえない。
だけど私は未練がましく、龍佑を追っている。
追い回している。

『桜庭。』

禮木の存在なんて消すかのような衝撃が私を襲った。
まだ好きでいろ!とでも龍佑に言われているようで。

「幻覚に幻聴…。」
私もとうとうおかしくなってしまったのか、と溜め息をついた。



そのときだった!!!
「…ば…さく、らば!桜庭ってば!」

龍佑!
私はばっ!と顔をあげた。

そこには龍佑の姿、ではなく
禮木の姿がありその顔は嫌悪感でいっぱいだった。

「ごめん、どーしたの?」
私は半分上の空で聞いた。

禮木の話は宿題の話のようだった。
しかし授業は聞いてなかったし適当に『うん。』とかいって流してしまった。

部活は仮入部も終了していたから
そのまま家に帰った。