「失礼します」

団長室と書いてあるドアをノックする。

「どうぞー」

部屋の中からは細谷の声がした。
毎度おなじみの光景だ。

ドアを開けると、二人がけソファに座り猫と遊んでいる細谷と、机に向かいパソコンを操作している我らが団長、一ノ瀬光太郎(こうたろう)が目に入ってくる。一ヶ月前から全く変化のないシチュエーションだ。

「話があるって……」


「ああ、それは皆集まってから言うから。おいで?」

細谷は自分の座っている二人がけソファの空いているところを軽く叩いた。

瑞貴はさすがだな、と思った。
ここで、「まあ適当に座って?」などと言えば瑞貴の居心地が悪くなることを見通している。

瑞貴が細谷の隣に座ると、猫が瑞貴の匂いを嗅ぎにいった。そのまま手に顔を擦り付けて来た。

瑞貴も細谷も、自然と笑顔になった。