甘ったるいくらいで

セイくんの部屋で乾杯した。


もともと、あたしは激しく怒るのが苦手で。

彼を送っている最中に、赤くはれていく頬を見ていると、彼に言われたことよりも、自分がしてしまったことのほうが申し訳なくなって。


家に着いたときには、借りてきた猫のように大人しくなっていた。

メガネにチェンジして、ようやく視力を戻した彼のペースにまんまとはまってしまい、なんとなく断れずに、お酒に付き合うことになったのだ。




「さっきはごめん。」

セイくんは真面目に、きちんと謝ってくれた。


あまりにも真摯な態度をみせるから、さっきの彼が嘘のように思える。


「・・・あたしこそ、殴ったりして、ごめん・・・。」

二人の間に変な空気が流れた。

重い感じ。

あたしは、その空気を吹き飛ばそうと、おどけて見せた。


「思ったより、力はいっちゃって、びっくりしたんだよ?人殴ったのなんて、初めてだし・・・。」

「何回も殴ったことあったら、やばいよ。」

セイくんもつられて笑ってくれた。

空気が一気に緩む。

あの笑顔だ。

あたしは改めてまじまじと、その笑顔を見つめた。