甘ったるいくらいで

「・・・ミナちゃんさぁ、なんでそんな頑張んの?」


右手に定期をつかんだ瞬間だった。

セイくんの声が振ってきた。


あたしより、ずっと背の高いセイくん。




あたしはドキッとして、固まってしまった。




二人とも立ち止まっていた。





「別に、そこまでしなくていいんじゃん?なんか必死すぎて、こっちが疲れる。」


グサッ。

さっきは寸止めだったくせに、今度は前触れもなく刺してきた。

『疲れる』なんて、一番言われたくなかった。

あたしといて損したって思われるの、いつも一番怖いのに。




あまりにもサラッとした言い方が、あまりにも無神経だ。


「な、なにが?」

「自分でわかってるっしょ。それともいつも頑張ってるね、なんて、言ってほしいわけ?」


正直、図星だった。

いつも見返りを求めない、そんな自分を装っていたけど。

いつかそれに気付いてくれる、誰かを探していたんだ。



みじめだな、あたし・・・。