甘ったるいくらいで

ちょっと、いい気分で、あたしはドリンクを飲んだ。

あたしが戻ってくる前とあとで、テーブルの盛り上がりは変わらないようだった。







「ありがと。」

ふと、声を掛けられた。

向かいの席のセイくんだ。



「え?」


「これ、灰皿。あと、取り皿も?」

「あぁ・・・。」



本当に柔らかい笑顔の人だな。

セイくんの声は小さめで、話に盛り上がるみんなには聞こえていないようだった。

あたしはドキッとしながらも、ホッとする。




親切や、思いやりって、人に気付かれると、わざとらしくなる。

狙ってるとか思われたくないし、なんか恥ずかしいし、だから誰にも見つからにようにする。

それがあたしのポリシー。

みんなに仰々しくありがとうなんていわれたくないし、感謝されたいからやってることでもない。




けど、セイくんはそれにどうやって気付いたんだろう。

大抵の男は気付きもしないのに。




それに、もともと声が小さいのかな・・・助かったけど。



もう一口ドリンクを見て、彼を見た。

柔らかな笑顔の向こうは、何にも見えなかった。




・・・もしかして、声の大きさ、狙ってやってる・・・?