――…………痛い

手足を念入りに縛り付けられた状態で、其れを思わない筈がなかった。
オマケに視界まで覆われるときた。
視界を覆われる事により、次の行動を予測出来ない様にしているのだろう。
悪趣味な野郎のやりそうな事だ。
実際予測が出来ない事には恐怖を覚える――視界の覆われていない状態で行為が行われるとし
ても、予測不能な事をして俺が怯えをなす事を愉しむ野郎なのだ。

ん? でもそれなら、そう変わらねえし怖がる事もねぇか?

僅かに緊張の糸が解れた様な気もしなくはないが、内心は焦っている事に違いはない。
荒々しい吐息が嫌なほど鮮明に聞こえる

「相変わず悪趣味だよなァ、アンタ。」

体のすべての自由を奪われた挙句、視界を覆われた状態で静寂に包まれた空間に居る事は恐怖でしかなかった。
だから、少しでもいいからそれを和らげたくて口を開いた。
しかし、其処に居る筈の存在から一切の言葉は返されてこない。

――もしかして、居ない?
――あ、有り得ねえだろ、ッ
――何一つ音はしてない筈だ!
――糞ッ
――敢えて言葉は返さないってか?

――悪趣味にも、限度があんだろォが!

不安と焦慮でいっぱいになった頭は徐々に熱を帯び始め、頭から足の先まで――熱は広がりを見せていく。
熱くて、熱くて、――熱に頭を侵されてしまいそうな感覚。
同時に、生理的な涙が今にも飛び出してしまいそうな程の嘔吐感が体を襲う。
そして、喉が嫌に乾く。

ッは ぁ!!

もう、限界、だっての……

何もされていない
でも、何かをされるよりも嫌な感覚

上総は全部わかっててやってる

其れを俺はわかっている。
だから余計に悔しい。
降伏する事が、死にたい程悔しくて、
幾度となく降伏する以外に脳のない自分自身に嫌気が差して、恨み続けた。

しかし、降伏するまで、
男がやめない事は俺がよく知っている

「上総……

もう、限界だから
無理だから

お願いだから、外してくれ……っ」

喉が乾いている事もあり、
弱々しい声が部屋の中に響く。

その声が上総に届いているのかどうか、
そもそも彼自身が今この場に居るのかわからない状態の今――其れを知る術はなかったけれど、兎に角俺には懇願する以外の道はなかった。