【BL】兄の玩具

「反抗――最近抑えられてたのにね?
残念だったね、振り出しに戻ってさ。
ごめんね、游暎の事中々〝飽きなくて〟

――でも当然だよね?
お前は、俺が小さい頃から最も入念に色々な事を仕込んできた――『玩具』なんだから」

弾かれた手を床に向けてぶらぶらと揺らしながら、俺に対して淡々と言葉を紡ぎ出す上総。
『玩具』
耳にタコが出来る程、耳にしてきた単語。

東雲 游暎は東雲 上総の玩具である

別に偉人が其れを定めた訳ではない。

――上総が決めたのだ。

彼は俺を構い始めた頃から、ずっと俺の事を『玩具』としか見ていなかった。
其れを暴露されたのは俺が十二歳の誕生日。
上総が十四歳の時。
優秀な上総に家を任せ、海外へと出張へ出掛けた両親抜きで迎えた誕生日当日。

上総はゆったりとした様子でソファーに腰掛け、とても十四歳とは思えぬ妖艶な笑みを浮かべ、ソファーの下で呆然と上総を見上げる俺に対して語り始めた。

それは恐怖だった。
ホラー映画よりも、お化け屋敷よりも、ジェットコースターが下りのコースを駆け抜ける時よりも、十二歳になったばかりの俺を恐怖させる話だった。

極めつけには俺が両親から頂いたクマのヌイグルミを取り出し、鋏で――

一変した上総の態度に慣れるまで二年。
ゆったりとした話口調等が変わっていない分、幾分がマシだったのだろうか?
慣れた直後に俺は道を踏み外した。
子供の純粋な心は瞬時にして黒く染め上げられ、『玩具』の様に俺を興味本位で甚振り続ける上総への憎悪は日に日に膨れ上がった。

其れでも幼き頃からの刷り込みが消える事なく今でも残り続け、憎悪に反発して、恐怖も増していく。
従って、俺は上総に最後まできちんと逆らう事が出来ない。

「……俺がアンタが飽きるの待ってたの、知ってんのか。」
「お前がわかり易すぎるんだよ。
寧ろアレでわからない方が馬鹿だと思うな。」
「…………」
「それより、『触れるな』なんて酷いな。――今迄いっぱい触れてきたのにさ。今更だと思わない?」

上総の手を払った事に、どうやら意味はなかったらしい。
再び伸ばされた手が、愛でる様に俺の身体を撫でる。
――勿論、其処に愛等ないのだけれど。
あったとしても、それは紛う事無き『偽り』に過ぎない。

――今回は、何をされるんだか。