9709㎞の恋







「ここです」






結局連れてきてしまった。あんなにキラキラした目で頼まれたら断れなかった。


帰りはタクシーを拾ってアトリエの近くまで乗って帰った。アトリエは少し森の中を通らなくてはいけなくて、車が入れるような道はない。




木で出来た2階建ての小さな家が私のアトリエ。まるで物語で登場してくるような雰囲気。元々は恩師の櫻木さんのアトリエだったけど、それを私に譲ってくれた。






「そこのソファーに座って待っててもらえますか?」


『はーい』






2階でいつも仕事をするから、1階はかろうじて綺麗。明日櫻木さんとお弟子さんの神木燐さんという人が来るから、掃除しておいて丁度良かった。




数年前に書いたものや数ヶ月前に書いたものを適当に手に取って持って降りる。






「はいどうぞ」


『ありがとう』







彼は一つ一つ丁寧に絵を見ている。途中いつ書かれたとかどこで書いたなどと質問をされた。


絵を見るその目は、画家の目をしていたような気がするのは気のせいなのだろうか。