「荷物は適当な所に置いてください。珈琲淹れますね」
『あぁ。ありがとう』
このアトリエも少し古くなったな、と櫻木は言った。櫻木さんがまだ独身の頃に建てたと言っていたからもう築30年は建っている。
でもそんな感じは全然してなくて、とてもいい木を使ってるんだと素人でも分かる。今はあまり匂わないけど、久しぶりに来たときは、家中木の匂いがしてとてもいい匂い。
「どうぞ。お好みのブラックです」
『よく覚えてたな』
「さんざん淹れてましたから」
日本にいる頃によく櫻木さん家にお邪魔してて、絵の休憩の時とかによく淹れていた。
あの頃も今も、人付き合いがあまり好きじゃない私を可愛がってくれて、本当の娘のように接してくれてた。櫻木さんには本当に感謝してる。
『あれ?これ燐が淹れる味によく似てるな。美樹淹れ方変わったのか?』
「え?」

