9709㎞の恋







すると、携帯の着信音が鳴った。着信音が私のじゃないからすぐに彼のだと分かった。


ちょっとごめん、と彼は断りをいれて電話に出た。







『もしもし。…いやパリにはいませんよ。ちょっと海の方に…え、本当ですか?分かりました。はい、じゃあまた』


「何か急な用事ですか?」


『いや、予定していた時間が早まって。ごめん今日は帰る』


「はい。どこに向かうんですか?」


『パリ。じゃあまたね』


「あ、送ります!」


『いやいいよ。公園の駐車場に車停めてきたから』


「じゃあそこまで送ります」






タクシーに乗って来た道は歩くと遠回りになるから送っていかないと。それに多分初めて来る場所だろうから迷っても困るし。