すると、携帯の着信音が鳴った。着信音が私のじゃないからすぐに彼のだと分かった。
ちょっとごめん、と彼は断りをいれて電話に出た。
『もしもし。…いやパリにはいませんよ。ちょっと海の方に…え、本当ですか?分かりました。はい、じゃあまた』
「何か急な用事ですか?」
『いや、予定していた時間が早まって。ごめん今日は帰る』
「はい。どこに向かうんですか?」
『パリ。じゃあまたね』
「あ、送ります!」
『いやいいよ。公園の駐車場に車停めてきたから』
「じゃあそこまで送ります」
タクシーに乗って来た道は歩くと遠回りになるから送っていかないと。それに多分初めて来る場所だろうから迷っても困るし。

