9709㎞の恋







ゆっくり、彼が"の"の字を書く。その顔は凄く真剣で、思わず見惚れるほどだった。






『蒸らしが終わったら、人数分のお湯を5~6回にわけ、粉をふくらませるように注いだら…出来上がり』


「んーいい香り。美味しそう」


『まあ飲んでみてよ。これ誰でも上手く出来る基礎的な方法だから』






普段飲む珈琲の香りと少し違うそれに、胸が高鳴る。今まではお湯を沸かして、ただそれを注いでた。蒸らすとかそういうのは初めてで、実はというか説明されている時からずっと胸が高鳴っていた。



そして一口、珈琲を飲む。





「美味しい…!」


『でしょ?』






私が淹れる珈琲より何倍も美味しい。コクがあってまろやか。家でもこんな美味しい珈琲が淹れれるなんて思ってもみなかった。






「ありがとうございました。こんな美味しい淹れ方教えてもらって」


『ううん。喜んでもらえてよかった』