ゆっくり、彼が"の"の字を書く。その顔は凄く真剣で、思わず見惚れるほどだった。
『蒸らしが終わったら、人数分のお湯を5~6回にわけ、粉をふくらませるように注いだら…出来上がり』
「んーいい香り。美味しそう」
『まあ飲んでみてよ。これ誰でも上手く出来る基礎的な方法だから』
普段飲む珈琲の香りと少し違うそれに、胸が高鳴る。今まではお湯を沸かして、ただそれを注いでた。蒸らすとかそういうのは初めてで、実はというか説明されている時からずっと胸が高鳴っていた。
そして一口、珈琲を飲む。
「美味しい…!」
『でしょ?』
私が淹れる珈琲より何倍も美味しい。コクがあってまろやか。家でもこんな美味しい珈琲が淹れれるなんて思ってもみなかった。
「ありがとうございました。こんな美味しい淹れ方教えてもらって」
『ううん。喜んでもらえてよかった』

