七瀬さんじゃなくていいよ

「うん、そうした方がキレイに声出てるよ。これからもそうしなよ」
私は今、笑えてるだろうか。
そもそも、窓の外を見てる時点でアウトだろうか。
さっきまでオレンジ色だった空が青紫になっていく。
グロいな、この色。

ふと、亜美が立ち止まった。
「あのさあ、舞って恋したことある?」
「え?」
いきなりの話題転換と、その話題に驚いてまぬけな声が出た。