七瀬さんじゃなくていいよ

風助は慣れた手つきで自転車の鍵をはずす。
空に浮かぶ月は雲に隠れて、雲が淡く光っているみたいに見える。
亜美と話していた時は見えた星たちも、雲に隠れて見えない。
私たちにとって、あの雲はなんだろう。
いつまでもついてまわる大人たちの目?
一生付き合わなきゃいけない同級生?
膨大な量のテキスト?
私は、どれでもないと思うなぁ。
「答えって、ないから、答えなんでしょ?」
ふと、亜美の声が脳裏をかすめる。