「ねぇねぇ聞いて」

こそこそっと、話す少女たち。

耳に手をあて、笑いながらささやく。



「この学校の、二年三組に、王子様がくるんだって」

「えーっ、うそぉ。すごいじゃん!」


友達が驚いたのをみた少女はクスリ、と笑って。

呆れたように、言葉を紡ぐ。


「あたしたち、一年だしぃ」

「ま、そーだよね。一年だし、関係ないよねー!!」

「うん!!…じゃ、帰ろっか!!」

「りょーかい♪」

…こそこそ話はここでとぎれて、

夕日の中に消えていった。

明日、この一年三組に、

とんだ王子様がくるともしらずに。

ふたりの少女のうしろには、

夕日でできた影があった。