1学期の中間テストが終わり、練習としては少し余裕があった頃のこと。

 テストの結果が運よくそれなりによかった。母が気前よく、臨時小遣いをはずんでくれた。晴香とデートするか、とも思ったのだが、その時運悪く、使っているリードが限界ぎりぎりなことを思い出した。

 晴香とどこか少し遠くに出かけたい気分もあるけれども、ややへたり気味のリードをだましだまし使って、肝心な時に割れてしまうのも困る。学校でまとめて購入しているバンドレンの青箱もあるんだけれども、たまには違うのも吹いてみたいとふと思った。

 思い立ったが吉日。もらった翌日、近所の楽器店に行き、ばら売りしていたリードを5枚購入した。臨時収入の約3分の1の1,500円。残りで晴香と映画でも観に行こうかなんて考えつつ、直感でいくつか選んだ。リコのグランドコンサートセレクトとバンドレンの銀箱。いい音が出ることを祈りつつ、店を後にした。

 翌日、昼休みの練習時に試し吹きをしてみた。今までバンドレンの青箱以外は使ったことがなかったけれども、リコもそれなりにスパッと音が出て悪くない。5枚のうち3枚は大当たり、2枚は次点と言った感じだ。臨時収入をうまく使えてよかったという気持ちで、気分がよかった。

 「お!いい音じゃん。いいな~、新しいリード。」
 「晴香もたまには別メーカーのを試しても面白いと思うよ。」
 「その前に・・・参考書買えって現場に連れ去られると思うよ。」

 晴香はテストの結果がイマイチ振るわなかったと言っていた。いろいろアドバイスとか教えたりもしたのだが、英語と数学と…ともかく振るわなかったそうだ。