時期はさかのぼること今年の春のことだった。

『麗空、ちょっと来なさい』

私はお母様に呼ばれたので、応接間へと向かった。

そこには、お父様・お母様・西野さんの他にもう1人見慣れない顔がいた。

(誰だろう…?)

『この子は西野雄介と言って私の息子でございます。雄介は先日執事研修のため訪れていたフランスから戻り晴れて昨日執事協会から執事バッチをいただいたのでございます。そこで、本日から雄介には麗空様専属の執事を任せたいと考えておりますがいかがでしょうか?』

『えー⁉執事⁉』

『麗空!はしたないお言葉は包みしみなさい。』

『失礼いたしましたわ。お母様。』

私には昨年の夏まで山井という執事がいたが、過労により心臓発作を起こし病状から仕方なく退職したのだ。

山井は私が幼い頃から共に過ごしてきた執事だっただけに精神的なショックが大きすぎて、それ以来執事をつけることを頑として断って来ていたのだ。

だから、しばらくの間は西野さんが私の身の回りをお世話してたけども、今年の春に執務長になってからは忙しくお嬢様の私が全てやらなくてはいけないハメにあっていたのだ。

『麗空、どうするの?お母さんとしては執事がいないと心配だわ。お父様も私も仕事で家を開けることが多くなるから。』

『うーん。一応、つけておきますわ。』