「ねぇ東山さん、別にわざわざリムジンじゃなくても良かったんじゃないの?」



「ですが、お嬢様には不快な思いをさせてはならないと思いまして…」



「ふふっ。相変わらずね」


私は車の窓を少し開けた。

春のいい風が入ってくる。


「ほんとに、アメリカとは全然違うわね…」



「お嬢様、何かおっしゃいましたか??」

「ううん、なんでもないよ」



「そういえばお嬢様、私はお嬢様をお送りした後、アメリカに戻ることはご存知でしたか??」



「うん、知ってたよ」


「作用ですか。もしも何かあった場合はすぐにご連絡ください」


「りょーかいっ」



「それとお嬢様…」


東山さんの声のトーンが少し下がった。


「ん?どしたの?」


「城ヶ崎財閥の娘という身分はなるべく隠しておいた方が良いと思われます…」



「そう…わかった」

なんとなくこの事は予想がついていた。



城ヶ崎財閥の娘となると、狙われる事が多くなってしまう。


アメリカでもそうゆう事が少なくはなかった。


これから執事の東山さんもいないとなると、余計に危ない。

「まぁ、隠してる方が女子高生ってのを楽しめるんだけどねッ!」

私は少し微笑んで言った。