「靴を、直してください」
それは、ふっと息を吹きかけたら消えてしまいそうなくらい、かすかな声だった。
でも、その前に、と俺は思う。
「分かりました。でも、その前に、まず、身体をちゃんと拭かないと。タオルを取ってきますから、とりあえずここで待っててください」
俺は、その女性のただならぬ様子に、放っておけなくなっていた。
店の奥の階段を上って、俺は、2階へ上がった。この店の2階は、俺の住処だ。この店に就職することを決めた時、店長が、「2階が空いているから、良かったら使っていいよ」と言われて、当時、留学から帰ってきたばかりで、お金が無かった俺は、店長の言葉に甘えることにしたのだ。店の2階部分は、元々、店長が、家族と暮していたのだが、何年もまえに、念願のマイホームを購入して引っ越したので、それ以来、誰にも使われていなかったらしい。
バスルームの棚から、大きめのタオルをつかむと、俺は、駆け足で店に戻った。なんとなく、彼女がちゃんとそこにいるかどうか、不安になっていたのだ。
彼女は、俺に言われたとおりに、そこで待っていた。俺がタオルを渡すと「ありがとうございます」と小さな声で礼を言ってから、髪を拭いた。
それは、ふっと息を吹きかけたら消えてしまいそうなくらい、かすかな声だった。
でも、その前に、と俺は思う。
「分かりました。でも、その前に、まず、身体をちゃんと拭かないと。タオルを取ってきますから、とりあえずここで待っててください」
俺は、その女性のただならぬ様子に、放っておけなくなっていた。
店の奥の階段を上って、俺は、2階へ上がった。この店の2階は、俺の住処だ。この店に就職することを決めた時、店長が、「2階が空いているから、良かったら使っていいよ」と言われて、当時、留学から帰ってきたばかりで、お金が無かった俺は、店長の言葉に甘えることにしたのだ。店の2階部分は、元々、店長が、家族と暮していたのだが、何年もまえに、念願のマイホームを購入して引っ越したので、それ以来、誰にも使われていなかったらしい。
バスルームの棚から、大きめのタオルをつかむと、俺は、駆け足で店に戻った。なんとなく、彼女がちゃんとそこにいるかどうか、不安になっていたのだ。
彼女は、俺に言われたとおりに、そこで待っていた。俺がタオルを渡すと「ありがとうございます」と小さな声で礼を言ってから、髪を拭いた。

