赤い靴

　そうだ。俺は前へ進まなければならない。父が作ってくれた靴を履いて。
　靴、とは、人が前へ進むための道具。それは、父の口癖だった。だから、父は俺に靴を作ったのだ。俺が、胸を張って、前へ進めるように。自らの魂を込めて。

　行かなきゃ。


　次の日、俺は新幹線に乗って、アパートへ戻った。卒業制作に専念し、それと平行して、留学の手続きを取った。俺の足元には、いつも父が作ってくれた靴があった。それを履いていると、父がそばにいてくれるような気がしたのだ。世界に1つしかないその靴は、俺にとって、特別な靴だった。