『学校つまんなくてサボリ。』
俺は碧さんに取り留めのない話を始めた。
碧さんは手を休めずクスリと笑いながら言った。
『遊んでられるのも学生のうちよ。』

俺は肘をつきながら碧さんを見つめる。
本当に綺麗な人だ。

今日は黒のサテンのシャツにヴィンテージのジーンズ、ウエスタンブーツ。
髪は緩くアップにして銀のデカい髪留めで後でまとめている。

長いマツゲに鼻筋がスラッとして、形の整った唇が完璧なバランス。

修利はジュークボックスにコインを入れて曲を物色中。

『はい。おまたせ。』

コルクのコースターに薄い銅製の細長いカップが置かれた。

俺はミルクとシロップを入れて鉄製のマドラーでかき混ぜる。
カランカランと氷がカップに当たり軽い音がする。
この音が結構好きなんだよね。

修利は曲が決まったみたいで、ジュークボックスが動いたのを確認すると席に戻ってきた。

碧さんは店内の有線放送の音を消した。

『退屈で窒息しそう。』
俺は誰に話す訳でも無く呟いた。

向かいのカウンター内で自分の飲み物を飲んでいた碧さんが俺を見て悪戯っぽく言った。

『退屈をぶっ飛ばしてみない?』

俺と修利は顔を見合わせた。