俺を見つめる碧さん、俺はグラスを両手で持ちながら碧さんの目を見ずに話始めた。

『free fire zoneの事でちょっと確かめたい事があるんだ。』

今度は碧さんが空のカウンター内を見つめながら煙草に火を着けて返事をした。

『うん。予感はしてたから、それに私はそのゲームで和樹君達のブレーンとして参加する事になっている。』


俺は碧さんの横顔を見ながら言った。
『そのゲームは危険じゃないのか?もし、危険なら修利は外す。』

碧さんはゆっくり煙を唇から吐き出して、静かに言った。

『ゲームはリスクがある程スリルがあるわ。
だから、危険じゃないと言ったら嘘になる。
でも、それ以上のモノを得られる事は私が保証する。この事は修利君は知ってるの?』


『嫌、知らない。俺の判断で碧さんに確かめたかったし、修利を危険に晒す事は俺は出来ない。アイツはヤル気満々だけどね。』


碧さんは煙草を灰皿に押し潰し、俺の方へ席を回して正面に向き、俺の席も碧さんの方へ向けて向かい合った。

そして碧さんはじっと俺の顔を真っ直ぐ見つめながら極上の優しい声で言った。

『大丈夫よ。死ぬ程の危険は無い。あのゲームで死者は出ていない。
それに私があなた達を死なせる様な事はさせない。私を信じて。』


俺は碧さんの瞳に映る自分の姿をドキドキしながら答えた。

『了解。碧さんに俺達の体を預けるよ。』


碧さんはニコリと微笑んで両手を伸ばして両頬を包み顔を近づけて唇を俺の唇に重ねた。

俺が想像していた以上の柔らかく暖かい唇、そして微かに碧さんの煙草の香りが漂った。

俺は碧さんを引き寄せたい衝動を必死に抑えた。

俺が今動いたらきっとこの美しい唇は離れてしまう気がしたから。


多分数秒しか経っていない短いキスだったと思う。
でも、俺は時間の概念が星の彼方にぶっ飛んだ。


碧さんの唇が離れ、おでことおでこをつけて碧さんは言った。

『学校へ行ってらっしゃい…。日曜日に待ってるわ。』

俺はキスの余韻の中で朧気に返事をした。
『分かった。』

そしてゆっくり席を立ち出口に向かい振り返って碧さんを見た。

碧さんは片手を上げて微笑みながら俺を見ていた。
俺はゆっくり扉を閉めて朝日に照らされた街の中に入っていった。