翌朝。俺はそのまま学校に向かうために、早く起きた。
碧子はまだ寝ている。

シャワーを浴びにベッドルームから出ると、キャットがゲストルームから荷物を持って出てくる所だった。

『よぉ。早いな。もう行くのか?』

キャットは笑って答えた。
『なんだ。寝ているうちに行こうと思ったのに…。』


バッグ1つのキャットを見て尋ねた。
『荷物はそれだけなのか?』

キャットはバッグを叩いて言った。

『身軽な方が動きやすいし、ここに荷物があれば、私は帰る場所があると思えるからね。』


俺はニコッと笑っていった。
『そうだな…。気を付けて行ってこいよ。』


キャットは俺の胸に軽くパンチを打って答えた。
『うん。行ってくる。碧子をちゃんと守んなよ。』

『お前に言われなくても、分かってるよ。』


そう言うと、キャットは鼻で笑って。
手を振って家を出ていった。


外に出ると、寝ている筈の碧子が立っていた。
キャットは碧子を見つめていた。

『行くのね…。』
碧子は静かに言った。


キャットは頷いて答えた。

『誰かがやらなきゃいけないことだから。それに、私がしたいことだから…。』


『どんなことがあっても、生きるのよ。そして、必ず帰ってらっしゃい。』
碧子はそう言うと、キャットは碧子を抱き締めて耳元で言った。

『うん。帰ってくるね。my mom。』


碧子はキャットの背中をポンポンと優しく叩いた。
キャットは碧子のほっぺにキスをして、歩き始めた。
碧子はキャットが見えなくなるまでその場に佇んでいた。


キャットは碧子の卵子から作られた試験管ベビーだった。