碧木は慎重にアーサーを捜していた。
先頭はキャット、真ん中は碧木、後方を修利。

アーサーは何処にいる?

全く気配が感じられないが、獣の気配さえ無いし、鳥の鳴き声もしない…。
静かすぎる。

頭上にも注意しなければ…。

【ヒュンッ】

何かが風を切る音がした!

キャットが前屈みになった。
碧木は銃を乱射しながらキャットに駆け寄った。

キャットの脇腹に鋭く削られた木の剣が刺さっていた。

修利は辺りを警戒している。
碧木は木の剣が刺さった場所の様子を見た。

キャットは碧木の腕を握りながら言った。
『引き抜いて。早く。』


碧木は引き抜くと、血が溢れた。
急いで布で止血をしたが、苦しそうで、医者の手当てが必要なのは明確だった。


碧木は見えないアーサーに向かって言い放った。

『出てきなさいアーサー!!』


アーサーは木の幹の影から音もなく表れた。

修利はサバイバルナイフを構え、倒れているキャットに寄り添っている碧木の前に出た。


アーサーは不思議そうに独り言の様に言った。

『何故手当てをする?使えなくなったら捨てればいいのに?守るのは何故だ?
マーニーも助けを呼んだ。
何時もは助けを呼ぶ人間を笑って始末していたのに…。何故だ?』


修利は構えたまま動かない。


碧木はキャットの傷を止血しながら、アーサーに向かって叫んだ。


『人間はね、助け合う生き物なのよ!死んで良い人間なんて居ないのよ!
アーサーはマーニーが死んで何も感じなかったの?!』


アーサーは優河に歩きながら不思議な顔をして碧木の問いに答えた。


『期待に背いて申し訳無いが、何も感じなかった。残念ながらね。』


アーサーはサッと身を翻した。

【ヒュンッ!!】


『ツッ!!』


修利の頬がパックリ切れた。
数秒経ってから血が滴った。


アーサーはワイヤーソーを懐にしまうと、ステッキの柄を抜いた。
フェンシングの剣より更に細くしなった剣を取り出した。


修利とアーサーは互いに距離を縮めてゆっくり回っていた。



『待てー!!ヤメロー!!』

和樹の声がした。
修利はアーサーから目を離さなかった。
和樹の声に反応したのは、アーサーだった。


和樹は藪から出てきて、倒れているキャットを見た。
碧木に視線を移すと、碧木は眉間にシワを寄せている。

修利の隣に来てアーサーに言った。

『マリアが来ている。』

アーサーがピクリと反応した。
そして、そのままの体勢でアーサーは和樹に言った。

『何故お前がマリアを知っている?』


和樹は修利の前に出て言った。
『マリアに会ったからさ。そして、マリアはお前を捜している。アーサー。お前と決着をつけにな…。』


アーサーがフッと笑った。
そして、剣を鞘に収め言った。

『マリアは僕を倒せない。だって、マリアは…。』


そう言いかけて和樹が遮る様に言った。

『お前のオリジナルだからな。』


碧木とキャット、それに修利も驚きを隠さなかった。
とくにキャットは驚いた様子だった。