「海斗」

ひょいと海斗の肩に顎をつけるようにして顔を上げたしるふの呼びかけに海斗が少し身を引いて応じる

見上げてくるブラウンの瞳は、昔ほど危なげな雰囲気が減ってきた

それはきっとしるふが成長したから

自分を認めて、許して、それでも向上心を持ちながら生きていく

「…おなかがすきました」

しばらく見つめ合った後、しるふが断固たる口調で告げてきた

「お前は犬か」

はあ、と息をつきながらあきれ交じりにつぶやくと

「オムライス、よろしくね?」

卵と牛乳は常備してあるからさ

まだ少し赤い目でしるふが笑いながら見上げてくる

了解、そう告げる代わりに柔らかな髪をひと撫でしてから立ち上がる

背後で、よし、シャワー浴びて来よう、というしるふの声が聞こえる

その声に、その吹っ切れた響きに海斗は、独り小さく微笑んだ











泣き虫と意地っ張り   完