あの時とこれからの日常

それでもしるふにとって海斗は理想だ

はっきりと口に出すことはないけれど、いつもあの背を追いかけている

いつか胸を張って隣に並べるように

海斗の、黒崎先生の教え子だと自信をもって言えるように

「それでも、しるふをつぶすわけにはいかないんだ」

静かな部屋に海斗の凛とした声が響く

医療という現場に諦めを感じていたあの頃に見つけた一つの真っ白い花

それを絶やすわけにはいかない

たとえ、周りから何と言われようともしるふを医者として育て上げると誓った

私利私欲と欲望渦巻く世界で見つけた小さな小さな光だから

潰れそうになるのなら支えてみせる

絶えそうになるのなら紡いでみせる

そう決めたのだから

「私も潰れる気はないよ」

抱きついてきたしるふをそっと抱きしめる

でも、としるふが言葉を続ける

「時々無性にやるせなくなるんだ」

自分の無力さに

自分の成長のなさに

「だから、泣きたいときは泣いて良いって言ってるだろう。付き合う覚悟はできてる」