「なんだ。泣いてないのか」

「私、泣き虫じゃないもんね」

「そーですか」

カバンを空いていることろに置き、しるふの横に腰を下ろしつつ、くしゃくしゃと頭を撫でる

されるがままになっているとそっと頭を抱き寄せられた

感じるぬくもりをそのままに沈黙していると、あやすようにゆっくりと肩をたたかれる

時計の針の進む音が響く室内に沈黙が流れていく

そのぬくもりと存在に安堵を感じて、顔が見えないように額を押し付けながら唇を引き結ぶ

はあ、とついた息は心なしか震えている

「…やっぱりさあ、むいてないと思うんだよね」

「医者に?」

短く問うと、ゆっくりとした頷きが返ってくる

「満足に患者を助けられないし、うまく切り替えできないし。ジレンマばっかり。大体、医者じゃなくったって良かったのよ。他にやりたいことがなかったわけじゃないし、子供好きだし、保育士とかだって良かったのよ。なんで医者だったかって今考えてもはっきり分かんないし、大学受験の自分に言ってやりたいわよ」

等々…、つらつらとしるふの口からは支離滅裂な言葉が紡がれる

はいはい、心の中で返答しながら途切れるのを待つ