あの時とこれからの日常

「黒崎先生って、黒崎医院長の息子さんですよね?」

院長は優しそうなのに

なんともなしに飯田がつぶやいた瞬間、しるふの驚きの声が一瞬医局に響く

「黒崎先生って医院長の息子さんなの!?」

あの有名な、黒崎病院跡取り!?

医療界新星、超凄腕若手医師の!?

「え、立花先生気づいてなかったんですか。黒崎海斗といったら黒崎病院跡取り息子ですよ」

逆に私は気づかなかった立花先生に驚きなんですけど

と、珍しそうに飯田が眉を寄せる

その隣で神宮寺がくすくすと肩を震わせている

「だって、……緊張してたから」

…そういうことにしておこう

「そっか、でもそうだよね。黒崎だもんね」

なんで気が付かなかったんだろー

不思議そうに自問するしるふを楽しそうに見下ろしながら、

「まあ、黒崎先生は別に気にしてないと思うわよ。それより立花先生頑張んないと、明日中なんでしょ?それ」

医局長に促され、はたと現実に立ち戻ったしるふは、二人に背を向ける

しるふの走らせるペンの音が響くのを聞きながら

飯田も目的の医者に検査結果を渡し終えると医局を後にした