飯田の看護師友達の談である

「ふーん、いいことじゃない」

それ、あんたのおかげだから

きっと気が付いていないであろう要因に飯田は心の中でそっとつぶやく

「これは、そろそろ本格的に認めなきゃいけないなー」

しるふと黒崎先生のこと

はあ、とため息交じりに頬杖を突く

「……こないださ、ナースステーションに居たらちょうど黒崎先生が入ってきて、何気なく、最近元気ないけど、何かあったのかって聞くんだよね」

壁を見つめながら話す飯田に、しるふはブラウンの瞳を向ける

「しるふが言ってた意外と優しいって意味が分かった気がした。あの時連れと修羅場ってちょっと荒れてたんだよね。でも私情を持ち込むのは私のポリシーに反するから隠してたつもりだったんだけど」

人間そうそううまく立ち回れない

そこに海斗が気が付くとは思わなかった

元気がないことを隠しきれていないことに対して責めるような口調だったら、海斗への認識は変わらなかっただろう

けれど、カルテをめくりながら紡がれた言葉には、明らかに案じる響きがあった

見ていないようで見ている

それを思い知らされたのは、その時だけではない

今日、病院を出る直前、しるふは連勤で疲れがたまっているだろうからあまり飲ませないでくれと言われた

たぶん、酔いが早く回るはずだと