あの時とこれからの日常

「そうかな」

自身が自覚のないのは今に始まったことではない

この鈍感さこそがしるふの美点、と思いたい

「しるふがきれいになるのはいいんだけどさ、その要因が黒崎先生だっていうのが面白くないのよねー」

「別に海斗って決まったわけじゃ…」

「決まってるのー。恋する女の綺麗さは、相手の男に寄るのー」

だー、釈然としない

と飯田はジョッキに残ったビールを一気に飲み干す

流れで生ビールを追加注文しながら

「悔しいけどさ、黒崎先生ってなんだかんだ言ってかっこいいのよね」

悔しそうな顔でぼそっとつぶやく

「あれ?どうしたの、莉彩さん。海斗のこと嫌いじゃなかった?」

からかい半分に聞いてくるしるふを睨み付ける

「嫌いよ。てか、苦手。でも、今看護師の間では黒崎先生が前にもましてかっこよくなったってもっぱらの噂」

「へー」

そんな噂聞いたことないや

タコのげそ揚げをかみ切るしるふは、全く気に留める様子がない

ああ、いい意味で腹が据わったなーとしるふを眺めながら思う

「ちなみにどう変わったって?」

「…前は、かっこいいけどちょっと怖いってみんな言ってたの。でも最近は雰囲気丸くなったし、笑顔も時々だけど見れるようになったって」