あの時とこれからの日常

「…初耳。海斗はそんなこと気にしてないと思ってた」

驚いたようにブラウンの瞳が大きくなる

「いつもしるふの寝顔見ながら考えてたからなー」

「ちょっと!!!」

海斗の冗談、いや意外と本気かもしれない、にバシッと海斗の腕をたたく

後に続くのは二人分の笑い声

「…言ってくれればいいのに」

言いたいこと言っていいよって

「意地っ張りが売りのしるふに言ったって雀の涙ほどの効果しかないだろう?」

「そう、…かも知れない…」

むむむ…と腕を組んで考えるしるふの頭をそっと撫でる

「あ、あとさ、これ聞いておこうと思ったんだけど、……どうして海斗は私に手、出さないの?」

たっぷりと見つめてから紡がれた言葉に、海斗が冷めてしまった紅茶にごふっとむせる

げほげほと気管に入りかけた紅茶を食道に追いやりながら

「……付き合い始めて半年以上たっても敬語の抜けない女に手なんか出せるかよ…」

そういうところが無自覚だって言ってんだよ

きょとんとした瞳を向けてくるしるふからそっと目をそらす

「今はちゃんと海斗のこと海斗って呼んでるし、タメ語じゃない」

「…しるふが無条件で俺を信頼してくれるまでは、手なんか出すつもりないよ」

好きだからこそ大切にしたいと思うものだ

特にしるふは、怖がらせたくないし、嫌な思いもしてほしくない

「…私さ、」

とん、としるふが肩に寄りかかってくる

「そういう、海斗の真面目なところ、結構好きだよ」

「そりゃ、どうも」