あの時とこれからの日常

一方、研修医であるしるふは、医局でせっせと机に向かっていた

その傍らには売店で買いあさってきたチョコレートやクッキー、プリン等々糖分摂取が望める品々がずらりと並んでいる

時々、顔だけは机に食いついて、けれど手はお菓子の袋を開けて口に運ぶという器用なことをやってのけている

その度にからの袋は増えていき、すでにいくつか空になった透明な袋が頼りなく机の上に重なっていた

「立花先生、何してるの?」

丁度医局に入ってきた神宮寺が、覗き込むようにかがむ

ついでにこの春新しく採用された飯田莉彩も一緒に覗き込んでくる

「黒崎先生から明日、日付が変わるまでにやっておけって。膨大な量の資料を」

しるふの思考はまったくこちらに向いていないらしく、医局長である神宮寺の声だというのにちらりともこちらを見ない

「なんなんですか、これ」

ひょい、としるふの顔を覗く様にしゃがんだ莉彩と目があって、ようやくしるふは顔を上げる

「んー、患者さんにどういう対応をするか。考えて来いって」

「これ、全部?」

明らかに明日日が変わるまでに終わるとは思えない量の紙の山を、唖然と飯田が指差す

「そう、鬼ですよ。鬼」

そういって時間が惜しいと言わんばかりにまた机にペンを走らせる