あの時とこれからの日常

結局、海斗とは少し休戦しようということになった

休戦とは、ようは距離を置こうということ

ひとまずお互いにいろいろ考えてみよう、と

恋人という立場ではなく、一歩下がったところから見ると

今まで見えなかったことが見えてくるんじゃないかって




「黒崎先生」

振り返った漆黒の瞳は、相変わらずこれといった感情が分からない

「今日、お茶しに行きません?秋穂さんのところ行きましょうよ」

大きなどたばたもなく5時には終われそうな予感がして、誘うにはぴったりだと思う

「いいよ」

あっさりとこれといってうれしそうにするわけでも、テンションが上がるわけでもない答えが返ってくる

休戦中にデートって本当はおかしいのかもしれないけど、休戦しているのは気持ちだけで、表向きはいつも通りだ

「じゃ、終わったほうからいつものところで」

海斗の横に並びながら、ああ、昔はこうして隣に並ぶことだけで緊張してたな、と研修医のころを思い出した