あの時とこれからの日常

「どうせ二、三日でやめていくさ。それまでの辛抱」

二、三日くらいなら耐えてやる

過去、海斗の指導についてこられた研修医はいない

そこまであたりがひどいとかいじめているつもりはもちろんない

きっと自分は研修医の心を無意識に折ることに長けているのだろう

生半可な覚悟で救命に来られても困るだけだから、

海斗としては研修医がやめていくことになんとも思っていない

これが最大の原因であるような気がしないでもないが

そんな状況なのに、なにを狙って神宮寺医局長が今回海斗を指導医にしたかが全く分からない

どうも神宮寺の掌で転がされているような気がして、ものすごく面白くない

「医者の仕事は下の世代を育てることも含まれると思うんだがねー」

「日々医局で睡眠をむさぼってるやつが何を言う」

説得力ってものがないんだよ

「塔矢の爪の垢でも煎じてもらったどうだ?」

少しは人間丸くなれるかもしんねーぞ

海斗の言葉に快活に笑いながらけらけらと言い放つ

「余計なお世話だ」

ふと一瞥を投げかけた後、

空になった紙パックを屋上のわきに置いてあるゴミ箱に投げ入れながら荒井にぴしゃりと言い放ち、海斗は屋上を後にする

空だけは、とてもきれいな快晴だった