そのソファに腰かけて雑誌を広げているのは、ここら辺というより世界的に有名な外科医・黒崎海斗

端正な顔に漆黒の瞳と落ち着いた雰囲気がとても印象的で、白衣姿も私服姿もスーツ姿もかっこいい

と祈は思っている

物心着いた時からそんなに体系等々変わっていないような気がするのは、たぶん気のせいではないと思う

「ただいま。母さんは?」

「ウィンドウショッピング中」

ぐるりと部屋を見回しながら問う愛娘に、端的に海斗が答える

「へー。父さん一緒に行かなかったんだ?珍しー」

「寒いからな」

「そっか」

確かに、父は寒いのが苦手だ

買い物行こう?という母の誘いに、寒い、と答える父が浮かんできて、祈は思わず苦笑する

その後に不機嫌そうに父を見上げる母の姿も

「紅茶飲むか」

切りのいいところまで読んだのだろうか、海斗が雑誌をテーブルの上に放り出し立ち上がる

「うん。外寒かったら暖かいの飲みたい」

「了解」

そう言ってキッチンに向かう父の後ろ姿を見つめる

何か月ぶりかに見る父は記憶と寸分たがわない

相変わらずだなーと思いながらソファに座って紅茶ができるのを待つ