ただいまというとおかえりと答えてくれる人がいるって言うのは、実は心温まることだ

帰宅した時に家の明かりがついているだけでも、料理が準備してあるだけでも違う

独り暮らしをしてみてしみじみと感じるその大切さ

それをかみしめられる実家が、黒崎祈は結構好きだ

木のぬくもりと雰囲気を存分に生かした戸建ての家は、祈が小学校入学前に建てられた

そろそろ築十云年になるが、まだまだきれいで洒落た家だと思っている

小さな庭の横にある車庫に止まるのは、父の愛車

助手席に決まって母親がいるのももう見慣れた光景だ

カチャと音を立ててドアが開く

「ただいまー」

見上げると落ち着いたブラウンの天井が広々と広がっている

冬使用のもこもこしたスリッパをはき、リビングを目指す

「ただいま」

「おかえり」

リビングに足を踏み入れつつ再び言うと、今度は返答があった

右側からキッチン、食卓テーブル、そして大きな窓の方にソファが向かい合わせでおいてあって

その前にはちょうどいい高さのテーブルがある

どれも家の雰囲気を壊さないように余裕を持っておかれている