不器用なのはお互い様じゃないか

きっと海斗なら、しるふの作った弁当を残すわけがないと

そうでもしないとちゃんと休憩を取っているのかすら怪しいと

視えない海斗の時間を心配しても

それを口にできない自分も

自分の誕生日なんて覚えておく必要ないけれど、

しるふや娘たちの誕生日は大切だから覚えているのだと

何も言わずにあの日と同じ真紅の輝きを一輪挿しに飾る海斗も

お互いをちゃんと想っているのは、お互い様じゃないか

そっと左手にはまるシルバーの輝きに視線をやったしるふの耳に

つがいで買ったカナリアの小さな鳴き声が聞こえた











黒崎家のその後  完