「ただいま」

リビングのドアを開けると部屋の中央、壁際に大きなツリーの木がある

数週間前、しるふたちが飾りつけをしたものだ

「おかえり」

ふと微笑むしるふの声の後に舌足らずに「ぱーぱー」と続く

部屋の暖かさと漂っている料理の香りに知らずにふっと息をつく

「さすが海斗君。ちゃんと7時までに終わらせたんだね」

一度時計の針を確認してから笑顔を向けてくるしるふに

「終わるわけないだろう。一時間と10分、どうあがいても終わるわけがない」

良いところでけり付けて帰ってきた

そううんざりしたように、手を洗いながらつぶやく

その隣にふわりと変わらぬ香りをまとうしるふが並ぶ

「そういう割り切りの良さというか、諦めのいいところ結構好きだよ」

一瞬、二人の視線が交差する

変わらぬブラウンの瞳と漆黒の瞳

宿るのは温かな光だ

「ぱーぱー」

無言で会話をしていると、定番、祈が舌足らずな声で抗議をしてくる

ぽてぽて、その表現がとても適切だと海斗は思っている、歩き方で近寄ってくる

「邪魔されちゃったね」

「まったくだ」

しるふの苦笑と海斗の軽いため息ももうお決まりだ