あの時とこれからの日常

「どしたの、海斗」

回転していない頭ではそれが精いっぱいの質問だ

瞬間、頭上から海斗の盛大なため息が降ってくる

「何やってんだ、お前は」

「んー、潜入調査」

表向きは海斗の浮気調査、でも本当は黒崎先生に会いたかった、それだけだ

「それはさっき飯田に聞いてしってる。そうじゃなくて、こんなところで寝るつもりか」

「あれ、海斗気が付いてたの」

「当たり前だろう。バレバレなんだよ。何が潜入調査だ」

第一俺は浮気はしてない

「おかしいな。私の読みだと終業までばれないはずだったんだけど」

ほら木を隠すなら森にって言うじゃない?

「だったらも少し周りに木がたくさんある森にするんだな。いくらまぎれても間伐が行き届いてちゃ見つけるのも容易い」

嫌味ーと眠そうにつぶやくしるふに、海斗がふっと息をつく

「これで一人の体じゃなきゃ手伝わせるんだけどな」

しるふが海斗だけではなく黒崎先生を好きなように、海斗もしるふだけでなく立花も大切に想っている

隣を歩く医者はやはり立花であってほしいのだ

園田でもなく、栢野意でもなく、神宮寺でもなく

海斗が一から育て上げたたった一人の医者にそばにいてほしい