「……医局長か」
「はい」
どうしようもない、そう言いたげにまた深いため息をつく
「ったく、あのバカは。どんだけ暇なんだ」
呆れ、諦め交じりに医局への階段を上る海斗の背に
「いいんですか、あのままにしてて」
と問いかける
「放っておけ。そのうち連行するから」
ひらひらと手を振りながら海斗の背はその言葉を残して遠ざかって行った
その後海斗は本当にナースステーションをきれいに避け続けた
いや、避けたというかしるふの存在に気が付いていない体を演じたというか
それでも滞りなく仕事をしてることは素晴らしい
園田や栢野意、看護師にとても自然にカルテを預け、自身がナースステーションに足を運ぶ瞬間を作り出さなかった
うまい、そう思わずにはいられない莉彩だった
「立花」
妊娠すると眠気に襲われる体質らしいしるふは、その瞬間も若干うつらうつらしていた
その呼び方と声に反射的に顔を上げると
ナースステーションの外側に肘をついている海斗が視界に入った
その顔にはあきれが混じっている
「黒崎先生」
重い瞼の目をこすりながら海斗を見上げる
立花と呼ばれるとつい黒崎先生と返してしまうのは、長年のくせだ
「はい」
どうしようもない、そう言いたげにまた深いため息をつく
「ったく、あのバカは。どんだけ暇なんだ」
呆れ、諦め交じりに医局への階段を上る海斗の背に
「いいんですか、あのままにしてて」
と問いかける
「放っておけ。そのうち連行するから」
ひらひらと手を振りながら海斗の背はその言葉を残して遠ざかって行った
その後海斗は本当にナースステーションをきれいに避け続けた
いや、避けたというかしるふの存在に気が付いていない体を演じたというか
それでも滞りなく仕事をしてることは素晴らしい
園田や栢野意、看護師にとても自然にカルテを預け、自身がナースステーションに足を運ぶ瞬間を作り出さなかった
うまい、そう思わずにはいられない莉彩だった
「立花」
妊娠すると眠気に襲われる体質らしいしるふは、その瞬間も若干うつらうつらしていた
その呼び方と声に反射的に顔を上げると
ナースステーションの外側に肘をついている海斗が視界に入った
その顔にはあきれが混じっている
「黒崎先生」
重い瞼の目をこすりながら海斗を見上げる
立花と呼ばれるとつい黒崎先生と返してしまうのは、長年のくせだ

