あの時とこれからの日常

莉彩の様子に、はあ、と軽くため息をついた海斗は

「朝から何やってんだ、あいつは」

と、瞳を細める

「気づいてたんですか」

「俺が気が付かないとでも思ったか」

ふと向けられた漆黒の瞳がちょっと怖い…

「しかも朝から?」

「もちろん」

「さすがですね」

感嘆した様子の莉彩に、そんなことはどうでもいい、という様に首を振ってから

「で、あいつは何しに来たんだ」

「潜入調査、とか言ってましたよ」

「潜入調査?あれで?」

変装のへの字も出来ていなかったのか、あきれ交じりにあれを指さす

「あれでもです。って、しるふの目的はどうでもいいんですか」

普通そっち気にしません?

「いや、あまりにもばればれで」

「そう言わないで上げてくださいよ。本人ノリノリでしたから。一回ナース服を着てみたかったらしいですよ」

「ガキか、奴は」

ああ、「あれ」がせっかく「あいつ」に戻ったのに、今度は「奴」になった

と言い回しでなんとなく海斗の心情がわかって、少し笑える