彼女、黒崎しるふ(旧姓立花)は、黒崎病院ERを代表する医師だった

だった、だ

今は黒崎病院副医院長夫人

長女の妊娠を機にERを離れた伝説の医局の花だ

それが今、なぜかナースステーションの一角に腰を下ろしている

しかも莉彩に笑顔で手を振っている

「ちょ!あんた何してんの!!!」

「ん?何って、見てのとおり看護師?」

ずかずかと歩み寄る莉彩の剣幕をものともせず、ほけほけとしるふは笑う

「ばか、あんた医者でしょ。なんでナースになってんのよ」

「一回さ、着てみたかったんだ、ナース服」

「そういう問題じゃないわ!ここ職場!!コスプレするとこじゃない!!」

くいくいと床を指さしながら怒鳴る莉彩にしるふの涼しい笑顔が向けられる

「失礼ー。これでもちゃんと仕事しに来てるんだって」

「いや、意味わかんないから!」

「立花せんせー、黒崎先生来ましたよ」

ひょいとナースステーションに顔を出した園田夏美医師がしるふに告げる

「マジ?やっば!ちょ、莉彩こっちきて」

莉彩の首に腕をかけたしるふは、こら!離せ!!てか、なぜここにいる!!と叫ぶ莉彩を無視してナースステーションの裏へと莉彩を引きずっていく