その日、飯田莉彩(旧姓)は、いつも通りロッカールームで着替え、長年親しんだナース服に袖を通した

先ほど黒崎病院に完備されている託児所に息子を預けてきたところだ

その脚で出勤、今日は5時までというシフトだ



「おはようございまーす」

シャッとナースステーションと廊下を仕切るカーテンを勢いよく開けると同時に元気よく声を出す莉彩に、ナースステーション内にいたメンバーが振り返る

「おはようございます」

莉彩がここ、黒崎病院に勤め始めてからずっとともに働いているメンバーと最近入ってきたメンバー

みんな気さくでとても付き合いやすい

子育てが大変な莉彩を気遣ってくれるし、子供の急な発熱なんかも快く対応してくれる

本当に働きやすい職場

それが黒崎病院高度救命救急センター

一時期出産と育児のためにはなれたが、はやり仕事がしたくて戻ってきた

きっと他の病院だったらそのまま専業主婦になっていたと思う

しみじみと黒崎病院の良さを実感しつつ、ナースステーションを見渡した莉彩は

「…は!?しるふ!?」

あんた何やってんの!?

ナースステーションの中央にあるテーブルに肘をついている懐かしき戦友の姿に目を見張る