「その仕事上の付き合いがいつどうなるかなんて海斗にはわからないのよ。海斗にその気がなくったって相手がどう思うかなんて止めようがないんだから」

「しるふは、俺が浮気することを心配してるのか、相手が仕事以上の感情を抱いて俺がそれに振り回されることを心配してるのか、どっち」

究極の質問

核心をついてきた海斗にしるふは口をいったん閉じる

「………、わかって聞いてるでしょ」

しばし二人で見つめ合った後、しるふがそっとつぶやく

「ま、ね」

「…ばか」

「お互い様」

とんとんと会話が進んだ後、一瞬の沈黙ののちにふっと二人で笑いだす

両親が笑ったからからだろうか、祈の表情が柔らかくなる

そのことに気が付いて二人でそっと祈の顔を覗き込む

まだ頬は濡れているけれど、表情はご機嫌だ

きっと久々に海斗が早く帰ってきて、こうしてかまってくれていることと

両親のけんか(本当はただのじゃれ合いだけど…)がひと段落したことに安心したのだろう

「よーし、海斗、ちょっと祈見てて。ご飯準備するから」

祈からしるふへと視線を移してから頷く海斗の瞳に優しい光が宿る