あの時とこれからの日常

「これで内科からの報告と新年度へ向けた新たな取り組みについての提案を終わります」

すっかり医局長として板についた塔矢が報告をしめくくる

まとめられた資料にもう一度目を通しながら穴がないか確認する

「内科はうちの顔の一つだからな。今年もよろしく頼む。…副医院長から何かあるか」

隣に座る海斗を仰ぐ

「いや、特には。ただ、」

ぽんと紙の束を机に放った海斗は、ちょっと席の離れた塔矢に視線を投げる

「医局長の仕事ばっかりして腕落とすなよ、塔矢」

腕が落ちたと思ったら即医局長から引きずり落とすからな

冗談交じりの言葉に塔矢がお前こそ、という不敵な笑みを向けてくる

こういうところは付き合いが長いので少ないことばでやり取りができる

塔矢の隙のない笑みに満足したのか、

「じゃあ、次、ER」

海斗がERに指示を出す

黒崎病院では珍しくない女性の医局長のひとりである神宮寺が立ち上がる

「では、救命救急における報告と新年度計画についてー」

「失礼します」

神宮寺の言葉を遮り、聖が会議室のドアを開けて入ってくる