あの時とこれからの日常

「黙って坂井の言うこと聞いてろ」

「えー」

裏切り者ー、としるふがすぐさま抗議する

「あのな、仮に、もしもってことがあってみろ。産婦人科の面々が責任感じて総辞職なんてされたら泣くに泣けない状況だろ?できるだけ危険は回避するに限る」

「だから、何度も言うけど全然つわりないの」

「それとこれとは問題が違う。ただ単に体質か、早くも親孝行な子なだけだろう」

だからって何かが起こらないとは限らない

「妊娠してても働いてる人はたくさんいるじゃない。莉彩だってさ…」

「だから、自分の立場ってものを」

海斗の言葉がしるふの言葉を遮る

そんなに黒崎病院副医院長夫人です!!ってふんぞり返って歩かれても困りものなのだが、こうも自分の立場を理解されていないとどう対処していいものやら

「もー、淡泊さが売りの海斗ならいいよって言ってくれると思ってたのに」

頬を膨らませてにらむ

「たとえ淡泊でも大切な従業員を失うことは頂けない」

「なにそれ、私のことを心配してるんじゃなくて、美琴さんたちを心配しての発言だったってわけ!?」

黙って聞いてれば!!

いったい私をなんだと思ってるのー!!